シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
玲の体調は万全ではなく、力が使えないのなら。
此処からでは芹霞と玲の元には追いつかない。
全速力で走ったとしても、全て"事の後"。
無事でも…無事でなくとも。
俺は…役に立てないことには変わらない。
運命に、全てを託すことには変わらない。
久遠とて…間に合わない。
久遠は布陣を使った言霊使い。
例え遠隔操作ができる力があっても、言霊の発動には詠唱の時間がいる。
長々と待機姿勢でいる時間はなく。
瞬間移動のように――
僅かな時間に大幅に移動せねば、2人を助けられない…それが現状。
ならば。
サセルモノカ。
俺は――
シナセルモノカ!!
「馬鹿か!!! 力を使うな!!!!」
前方で久遠が怒鳴った。
…使うなだって!!!?
こんな緊急時に使えない力など、俺にはいらない!!!
オレガイルノニ!!!
俺が正に風の力を発動しようとした瞬間、ありえない気配に集中力を乱された。
同時に、久遠の動きが止って。
「お前はせりの元に行け!!!」
久遠は前方を睨み付け、身構えた。
そう前方に――
まるで予告無しに、
突如そいつは現われたんだ。
こちらが気配を感じる前に。
不気味な仮面を被った――
黄色い…外套男。