シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
 

視線を感じる。


久遠ではない。

黄色い外套男からだ。


殺気ではない。

その証拠に、男は動く気配を見せない。


ただ俺を見ているだけだ。


久遠の顔が、怪訝なものに変わる。


「何だ…? 気配が…ぶれる?」


久遠の呟き。


俺は感じていた。


男は確かに邪気には塗れてはいる。


だが邪気の発生は、その黄色い布。


男自身の…気配からは、同様な邪気は感じられない。


それが、久遠のいう"ぶれ"なんだろう。


ぶれているが為、男を走査出来ない。

見定める事が出来ない。


俺に注がれる男の視線。


俺は…覚えがあった。


しかし記憶とは…微妙に違う視線。

本物と…偽物の、混合したような視線。


ああ、そうか。


"あいつ"なのか。


俺には理由が判る。


理由が判らないから、久遠が気づかない。

確定には至らず、"ぶれ"に惑うのみ。


そして外套男は、それを久遠に告知せず――無言で俺だけを見ている。


だから俺は――。


「久…遠。芹霞…と玲の…元に行…け」


まだ発音は完璧ではなく、喉元は掠れて仕方が無いけれど。



「こい…つは…俺に…用だ」


そう。


この視線には覚えがある俺は、

視線で"言葉"を受け取ったんだ。



クオンヲドケロ。



それを拒絶すれば、間違いなく実力行使に出る。

目的の為には手段を選ばない。


そんな視線だから。


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