シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
 

縫い付けられていたんだ。


仮面と…地肌が直接。


だから簡単には剥がれなかった仮面。

それを俺が、ぶちぶちと音をたてながら、無理矢理に引き剥がした。


真紅に染まった太い糸が、半分切れ…そこから血が滴っているのが判る。


仮面は…まだ顎に繋がる糸によって、不自然な角度で止っていた。


ああ、問題は糸や仮面なんかじゃない。


俺の奇異なる眼差しに気づいたのか、仰け反るようにして俺の視線から顔を隠そうとする。



『み…るな…ぁ』



ああ、唇が――

太い糸で乱雑に縫い付けられていて、

開くことさえ困難な状態だった。


何でこんな!!!?



『み…るん…じゃな…ぃ』



奇妙な声は…機械を通してのみ、意味を成すというのか。


惨たらしい有様は、唇だけではない。


整っていたあの顔の面影は何処にもなく。


血だらけで、腫れ上がった赤黒い肉が覗くその顔は。


――醜悪。


あまりに変わり果てた姿だった。


本当にこれが榊か、俺は自分の目を疑った。


しかし――

唯一…無事な彼の目。


男の、片目だけが物語る。


その顔に相反した、綺麗なアーモンド型の目。


吸い込まれそうなほど綺麗なその瞳は…。


間違いなく――

遠坂榊に違いなかった。

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