シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
「誰にや…られた!!!?」
思い返せば――
妹である遠坂は、蝶のサナギを体内に入れられて操られていた。
その発生源が、付き添っていた兄からだとすれば。
その兄は、誰から…そんなものを植え込まれていた?
それは…この姿と関係があるんじゃないか?
しかし榊は答えない。
唇は縫合されていると言えども、声帯は潰されず、呼吸器を通して"生きた"声が聞こえるのは、奇跡に近い。
榊は強い男だ。
最強氷皇の腹心で、氷皇が唯一認める部下で。
こんな有様になるような男ではないんだ。
「誰だ…!!? 誰…が…!!?」
仮面をつけた榊は答えない。
氷皇の顔が浮かんだが、俺はその選択肢は捨てた。
氷皇は非情なれど、唯一自分が認める腹心の部下を、ここまで痛めつけて喜ぶ悪趣味のようには思えなくて。
仮に氷皇が手を下したというのなら。
榊のこの姿は、"必然"となる。
どうして顔をここまで痛めつけたか。
どうして黄色い外套をつけさせたのか。
ああ、今はそんなことより。
「早く…治療を…!!!」
仮面の裏の棘に、何か薬でも塗られていたら…命すら危険になるんだ。
どこまで元の顔に戻せれるのか判らないけれど…このままではまずい。
仮面をつけねば生きていけなくなる。
男は――
榊は――
『ひつよ…ぅ…な…ぃ』
頭を横に振った。
「そんなこと…!!!」
言ってられるかと声を荒げようとした俺に、
『ゆ……か…』
酷く震えた単語を向けられた。