俺様専務とあたしの関係
俺様専務
「新しく就任する専務の秘書になってくれないか?」
恒例の4月の人事異動の直前、上司からの内示にあたしは絶句した。
「あ、あの…。あたし、秘書経験はありませんが…」
「ああ、大丈夫。今までやっていた総務の仕事が役に立つから」
ええ~!?
何、その軽い感じは…。
6畳ほどの窓一つない殺風景な応接室で、黒いフェイクレザーのソファーから動けないままのあたしの肩を叩き、上司は出て行った。
それも、余計な一言を添えて。
「そういう事だからよろしく。なぁに、佐倉(さくら)なら大丈夫。どんな事にも動じないだろ?」
はぁ!?
とぼけた事を言わないでよね!
あたしは、あたしは…。
動じない女なんかじゃない!
そういう“フリ”をしているだけなのに…。
「何でよ~。何であたしなの~?」
半泣き状態のあたしは、しばらくソファーの背もたれに体を倒し、呆然としていたのだった。
< 1 / 194 >