俺様専務とあたしの関係
汗ばんだ体を冷やすにはちょうどいい風が、寝室の窓から吹いてくる。
本当は、こういう風を二人で感じられたらいいのに…。
あたしは一人、ベッドの中でシーツにくるまったまま、そんな事を考えていた。
「気持ちいい…」
目を閉じると、風と一緒に、夜の街の音も流れ込んでくる。
マフラー音を響かせて走る車や、バイクの音や…。
夜でも街は眠らないんだ…。
章人も、そんな事を思いながら景色を見ているのか、“タバコを吸ってくる”とバルコニーに出たきり戻って来ない。
「一人でいても、つまらないし…」
あたしは、簡単にシャツを羽織るとベッドを降りた。
といっても、これは章人のもの。
あたしにはサイズが大きくて、羽織るだけでもミニ丈ワンピースくらいのカバー力はある。
胸の部分だけボタンを留めると、バルコニーへ向かった。
「何を考えているの?」
タバコを吸い終えた章人は、手すりに寄り掛かり街の景色を見ていた。
「ああ、美月。いや、夜の街って昼間より活気があるなって思って」
呼び掛けたあたしに振り向くと、小さく微笑む。
そしてまた、夜景に視線を戻したのだった。
「本当だね…」
こんな夜景、いつか蒼衣さんとも見たのかな?
その時は、どんな風に見たんだろう。
どんな会話をしたんだろう。
「ねえ、専務…」
あたしは章人の横に並ぶと、夜景を見つめた。
「おい、美月。専務って呼ぶなと言ったろ?」
口を尖らせる章人に、あたしは笑った。
「真剣な話をしたいから。だから、章人専務。ちゃんと聞いてください」