俺様専務とあたしの関係
「専務が、心底好きになった人…?」
呟くように言うと、章人は小さく頷いた。
「美月はどこまで知ってるのかな?」
「蒼衣さんに、プロポーズをしたって事は聞いています…」
すると章人は、何かを観念した様に笑みを浮かべた。
「そう。蒼衣とは二年ちょっと、付き合ったんだ。もちろん、アメリカで」
「アメリカで?」
「ああ。あいつは、ワーキングホリデーで来ててさ。友達の紹介で知り合ったんだ」
ワーキングホリデーって、働きながら学校にも通うってやつよね?
蒼衣さんて、すごい人なんだわ…。
「明るく控えめで、それでいて芯はしっかりしていて…」
そう話す章人の目は、遠くを見つめている。
そして、なんて幸せそうな顔をするんだろう…。
「誰よりも幸せにしてやりたかった…」
羨ましい。
そんな風に想われる蒼衣さんが、妬ましいくらいに羨ましい。
「オヤジも結婚には賛成してくれてたし、蒼衣とも式の日取りとか話し合いをしてたんだよ」
「そんなに具体的にですか?」
「ああ」
それなのに、蒼衣さんの浮気で別れるの…?
「和久社長は、蒼衣さんの浮気が別れた原因て言われてましたが、本当なんですか?」
とても信じられないんだけど。
「そうだよ。本当だ。ある日突然、あいつは敦弥(あつや)と、よりによってライバル会社の御曹司と寝たって言ってきたんだ」