俺様専務とあたしの関係
「美月…。ごめんな。寂しさを埋めたくて、蒼衣を忘れたくて抱いていた事は事実だ」
少し冷静さを取り戻したのか、口調はいつもの調子に戻っている。
「いいんです。謝らないでください。最初から、本気じゃない事くらい分かってましたから」
あたしは背中に顔を埋めたまま、ゆっくりと言った。
この温もりを、あたしなら手放したくないけどな…。
「だけど美月。お前を知りたい気持ちや、心配する気持ちや、側にいて欲しい気持ちも本当なんだ」
「はい…」
体に回していたあたしの手を、章人は握りしめると振り返った。
少し赤くなった目に、もう涙はない。
「乱暴な事を言っているのは分かってる。美月の気持ちを無視しているのも分かってる…」
「章人…?」
ぼんやりと見上げるあたしの頬に軽く触れた章人は、顔を近付けながら言ったのだった。
「それでも、美月には側にいて欲しい。仕事の時もプライベートの時も…」
そして次の瞬間、あたしたちの唇は重なった。
章人は痛いくらいにあたしを抱きしめると、舌を強く押し込んでくる。
それには応えない様にしようと思っていると、まるで急かす様にさらに奥へと入っていった。
ダメ…。
これに応えたら、あたしは認めざる得なくなるから。
逃れられないくらい、章人にハマった自分を…。
だから、絶対に応えない。
応えない…。
それなのに、章人は唇を少し離すと言ったのだった。
「美月を好きになりたい…」
「章人…」
その言葉にあたしは、止めようのない愛おしさを覚えて…。
夜空の下で抱きしめ合い、絡みつく様なキスをしたのだった。