俺様専務とあたしの関係
専務室から会議室までは、3階分しかない。
エレベーターで数十秒。
そんな短い間だというのに、章人はここでもキスをしてきたのだった。
「章人専務…、やめてください」
「拒否るかなと思ったんだけど」
意地悪く言われ、ゆうべエレベーターでキスを拒んだ事を思い出した。
「そ、それは…」
言葉に詰まっていると、エレベーターが行き先階で止まり、扉が開きかける。
「充電」
ニヤッと笑みを浮かべると、章人はそう言ってエレベーターを降りたのだった。
あ~あ…。
結局、流されてるだけだわ。
昨日はほとんど、自分の本当の気持ちとは反対の事をしたんだもん。
キスを拒めるはずがない。
あたしだって、したいんだから…。
会議室の前にいる、社長とアメリカ支社からやって来た現地法人の役員を見つけると、章人は愛想良く手を振っている。
あたしはその後ろ姿を見ながら、心の中で呟いた。
“あたしも充電になりました”
って…。
社長の側にいる絢に気付き、笑顔で向かおうとした時、
「ハ~イ!アキヒト!」
さすがのあたしでも聞き取れる英語が、耳に入ってきた。
「ん?」
思わず振り向くと、ブロンド髪の大柄な女性が、ハイヒールの音を立てながら章人に近付いて行った。