俺様専務とあたしの関係
「亡くなられた!?」
「うん。それからすぐに、社長は和久社長のお母さんと結婚。そして和久社長が産まれたってわけ」
これで、少し分かったわ。
章人が和久社長と会った時、いつも硬い表情だったのが。
「もしかして、専務と和久社長は仲が良くない?」
遠慮がちに聞くと、絢は大きく頷いた。
「とっても。それに、和久社長は、かなり章人専務にライバル心むきだしだから」
なるほど…。
「ねえ絢。実はね、蒼衣さんの話を最初に聞いたのは、和久社長からだったんだ」
そう言うと、絢はさらに驚いた顔をする。
「和久社長から…?」
その顔はどこか青ざめているけれど、そんなにマズイ事なの?
「うん。この前の接待の日、あたし和久社長と二人になったでしょ?あの時に、蒼衣さんの結婚式の招待状を預かって…。それで聞いたんだ」
そこまで言うと、絢は眉間にシワを寄せた怖い顔で何かを考え込んでしまった。
「どうしたの、絢?」
どこからどう見ても、普通じゃないんだけど。
「あのね…、専務と美月って…」
そこまで言いかけた時、絢の業務用携帯が鳴った。
秘書室を離れる時は、転送にしてあるから、それが業務の連絡だと分かる。
「ごめんね、美月」
絢は慌てて電話に出ると、それは社長のお客様らしく、丁寧に受け答えをしている。
そして、“すぐに参ります”と言うと、電話を切ったのだった。
「美月、話の途中でごめんね。行かなくちゃいけなくて」
「ううん。気にしないで。こっちこそ、引き留めたみたいでごめん」
小さく手を振り、走り去る絢を見ながら、あたしはますます章人という人を知りたくなってしまった。
絢のあの反応、何か意味があると思うのだけど…。