俺様専務とあたしの関係
その日は、スケジュールが多忙で、章人と事務的な会話以外はしなかった。
だから、思い切って夜に、聞いてみようかなと思ったけれど…。
「美月ごめんな。今夜は社長たちと飲みなんだ」
と、章人に突然の予定が入ったのだった。
「そうなんですか…」
どうやら、アメリカ支社の人たちの帰国が明日になり、今夜は飲みに行くらしい。
絢は社長と同行なのに、あたしは連れて行ってくれないんだ…。
なんてヒガミも入りながら、帰り支度を整えていると、
「そうだ美月。ちゃんと家にいろよ?勝手に出て行ったりしたら、許さないからな」
半分本気、半分冗談とも取れる口調で言われた。
「…はぁい」
別に、そんなつもりはないけど。
どうして、そんな事を心配しているんだろ。
指紋認証登録のお陰で、一人でも入れる様になった章人の家。
あたしはそこへ帰り、夜の早い時間には、一人で眠るには広すぎるベッドに入る。
一人で寝るって、こんなに味気ないものだったっけ…?
目を閉じても少しも寝付かれず、寝返りを何度も打つ。
ほんの短い期間で、あたしは“一人”で過ごす時間を忘れてしまったみたい。
章人に出会うまでは、孤独だと思っていたのに…。
そして、それでいいと思っていたのに…。
「中途半端に章人の匂いがするから、余計に寂しいんだわ」
布団に顔を埋め、無理にでも眠りにつこうとしていた時、鍵の開く音がして章人が帰って来たのだった。