俺様専務とあたしの関係
「美月…」
汗も引き、抱きしめ合う温もりで眠気に誘われ始めた頃、章人が優しく髪を撫でながら声をかけてきた。
「なに?」
まだ夢心地に包まれ、あたしは目を閉じたまま、章人の胸に顔を埋める。
「美月といると不思議なくらい、心が満たされるんだよ」
「どうしたの?急に」
ゆうべ、出て行くとか言ったから、気を遣ってるのかな?
すると、章人はあたしの髪にキスをすると、抱きしめながら言ったのだった。
「本当だよ。美月は、何だかんだで、いつもオレを受け止めてくれる」
「そんな事ないよ。ゆうべは、出て行きたいって言ったじゃない」
「それ。それの本当の理由を教えろよ。分かってるんだよ。美月の本心は違うって」
髪を撫でる章人に、あたしは小さくため息をついた。
何で分かるの…?
今まで、誰も気付いてくれなかったのに…。
ううん。気付こうとしてくれなかったのに。
「美月、怖がらずに言え。何でいつも強がって、壁を作るんだよ?」
その言葉に、あたしは思わず涙が溢れる。
「あたし…。怖いの。人から本気で愛されない事が…」
声を殺して泣くあたしを、章人は黙って優しく抱きしめる。
ベッドの中で今ほど、この人の温もりを感じた事はない。
「自分から愛しても、愛されないくらいなら、最初から人とは割り切って付き合おう。そう思っていたから…」