俺様専務とあたしの関係
章人と付き合うだなんて、人事異動で秘書に就任した時には、想像もしていなかった。
それが、こんな風に恋に落ちるなんて不思議でたまらない。
やっぱり、人の気持ちなんて分からないな…。
窓に目をやると、うっすら東の空に明るさが見え始めた。
もうすぐ夜明け…。
朝が来るとあたしたちは、また上司と部下にならないといけない。
さすがに公私混同はマズイもんね。
「章人、ちょっと前に、あたしを好きになりたいって言ってたのに…。もう好きになったの?」
と言った後で、ちょっと後悔。
まるで、嫌みに聞こえそう…。
すると、あたしの心配をよそに、章人は吹き出す様に笑った。
「そうだよな?そこは突っ込まれて当然だよ」
ベッドの中、至近距離で見つめる章人にドキドキする。
「じゃあさ、何で美月は、オレの事を好きだって認めたくなかったんだよ?」
「え~?ていうか、今はあたしが聞いてるんだけど」
口を尖らせると、優しい笑みを浮かべた章人が言った。
「いいから、教えて?」
もう~。
こうやって、なんだかんだでペースに乗せられているんだもんなぁ。
「傷つきたくなかったの。受け入れてもらえなかったら怖くて…」
「それだよ。オレも同じ理由。美月には、もう恋に落ちてた。だけど、怖かったんだ。拒絶されるのが。だから、誤魔化してた」
その言葉に、章人があたしと似ていると言っていた意味が分かった。
あたしたちは、同じトラウマを抱えていたんだ。
すべてはただ、無条件に受け入れて欲しい。
その気持ちからなんだけど…。