俺様専務とあたしの関係
章人が名前で呼ぶ事にこだわっていたのは、壁を作られたくなかったから。
実母でないお母さんとの間には、きっと見えない壁があるんだろうな。
あたしは、どちらかと言えば踏み込んで欲しくないタイプだから、やっぱり章人に比べて暗い性格な気がする…。
「美月、お前はもう少し自惚れろよ?少なくとも、オレはお前が思う以上に好きだから」
「うん…」
考え込んでいたあたしに、力強い言葉が投げ掛けられる。
それは、心を満たすには充分過ぎて、気が付いたら眠りに落ちていた。
たった2時間の睡眠時間だったけれど、今まで生きてきた中で一番、心地よく起きられたと思う。
それは、章人と“恋人同士”になった朝だから…。
優しく、でも少し色っぽいキスで目が覚めた一日からは、また“専務と秘書”が始まる。
本当は、気にかかっている問題は何一つ解決していない。
けれど、しばらくは余韻に浸っていよう。
幸せの余韻に…。
生まれて初めて味わう、本当の恋の幸せに浸っていたい…。