俺様専務とあたしの関係
22時、あたしはタクシーを飛ばし、和久社長のオフィスへと向かった。
オフィスといっても、雑居ビルの一室で、営業所のような小さい部屋。
もちろん、和久社長は普段はここにいないらしいけれど、現場視察などの際には利用する場所らしい。
5階建てのビルには、空室もあれば、有名企業の営業所が入っていた。
他の会社はすでに業務が終わっている様で、エレベーター前にだけ小さな明かりがついている。
2階へ向かうと、そこだけ明るくて、スーツ姿の和久社長が出迎えてくれた。
「ごめんね、美月さん。兄貴には怪しまれなかった?」
「大丈夫です。タイミング良く、今夜は飲みに行かれているので」
管理職用と思われるデスクが一つと、そこから見渡せる様に6席、向かい合わせで配置されている。
キャビネットが多いせいと、それほど大きい部屋でないせいか、かなりの圧迫感があった。
緊張しながらも、奥にある6畳ほどの休憩室へと案内され、向かう。
黒い合皮の二人掛けソファーと、使い込まれたテーブルが置かれてあった。
「それなら良かった。兄貴は心配性だから、内緒にして欲しかったんだよね」
「そうなんですね…」
愛想笑いを浮かべるも、怪しい気持ちでいっぱいだ。
実は、和久社長には申し訳ないけれど、絢には話してきた。
いつだったか、和久社長から蒼衣さんの話を聞いたと言った時、かなり動揺していたから。
きっと何かあるんだろうと思い、一応話をしたのだった。
やっぱりその時も、意味深な感じはあったけれど…。
ゆっくりとソファーに座ると、和久社長も隣に座ってきた。