俺様専務とあたしの関係
隣に座られると緊張するんだけどな…。
気付かれない様に少し離れると、突然、和久社長が手を握ってきたのだった。
「しゃ、社長!?」
思わず飛び上がると、ニヤッとした不気味な笑顔を浮かべて、あたしを見ている。
「どうして、そんなに驚くの?これが兄貴なら、そんな反応をしないんだろう?」
「え…?どういう事ですか?」
背中に冷や汗が流れる。
強張るあたしに、和久社長はゆっくりと立ち上がり近付いた。
「美月さん。兄貴と関係があるんだろ?もしかして、もう付き合ってる?」
「な、何を言っているんですか…?」
「誤魔化したって、二人の雰囲気で分かるよ。兄貴、どんな顔をするかな?好きな女を、二度も寝取られたとしたら」
ジリジリと、面白おかしい様子で近付く和久社長を見ながら、無防備にこんな場所まで来た事を後悔した。
薄々、気付いていたのに。
章人と和久社長の仲が悪い事を…。
誰もいないビルで、泣き叫んだところで誰も助けに来てはくれない。
後ずさりをしながら、なんとか出口を確認しようと視線だけを動かすと、
「逃がさないよ美月さん。オレは兄貴が大嫌いなんだ。兄貴が大事にするものは、全て奪ってやる」
気付いた和久社長に腕を掴まれ、乱暴に床へ押し倒されたのだった。