俺様専務とあたしの関係


部屋の蛍光灯は薄暗く、あたしを見下ろす和久社長の顔が曇って見える。


だけど、不気味な笑顔を浮かべていることだけは分かった。


「昔から兄貴が嫌いなんだよ。長男てだけで、母親が死んだってだけで、オヤジは兄貴を贔屓してる」


「贔屓…?」


「そうだよ。今の会社だって、兄貴に継がせたいんだ。それで、オレと揉めない為に、オレを子会社の社長に就かせた」


吐き出す様に話す和久社長を、あたしは押し倒されたまま黙って聞いていた。


「子会社の社長ならいいじゃない。普通は、それすらもないわよ」


和久社長は知ってるの?


章人の寂しい気持ちを…。


ずっと、疎外感を感じていた事を…。


「何がいいだよ!兄貴は何でも許されるんだ。好きな女だって、自分で選べる。なにもかもが、オレとは違うんだよ!」


「和久社長…?」


和久社長から笑顔は消え、顔を歪めている。


「オレは、付き合う女もオヤジからうるさく言われて、好きなのに別れた女もいた…」


あたしの両腕を掴む力が、一層強くなる。


「でもな、兄貴は好きな女と一緒にいられるんだ。でも蒼衣さんは、まんまと寝取られてさ。本当、おかしかったよ」


わざ笑う様に言った和久社長に、あたしは言葉にならない怒りを覚える。


「何を言ってるのよ!章人が、どれだけ蒼衣さんを好きだったと思うの?どれだけ傷ついたと思ってるのよ!」


いつかの夜、章人が涙を流して蒼衣さんの話をしてくれたのを思い出す。


すると、あたしの言葉を聞き流す様に、和久社長は再び不気味な笑顔を浮かべた。


「“章人”ねぇ。やっぱり、美月さんは兄貴とデキてるんだ?」




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