俺様専務とあたしの関係
「和久社長…」
そんなにアッサリと謝られると、拍子抜けをする。
だけど、和久社長は視線を章人に向けると、表情を硬くした。
「だけど、オレが兄貴を嫌いな事には変わりない」
「和久!」
奥様がたしなめようとすると、それを章人が止めたのだった。
「分かってるよ、お前の気持ちは。あの夜、しっかりと聞いたから」
皮肉たっぷりの言い方に、和久社長は顔を赤らめ黙り込んだ。
もちろん、“あの夜”とは、あたしを襲いかけた夜の事。
章人は、先約をキャンセルしてまで駆け付けてくれたんだから。
でもそれは、和久社長にとっては、計算違いだったんだろうけど…。
「まったく、あなたたちの不仲には情けなくなるわ。でもそれは、私たちに原因があるのよね」
章人と和久社長のやり取りを見ていた奥様が、ため息混じりに呟いた。
「章人の気持ちは、電話で聞かせてもらったし」
優しい笑顔の奥様が、章人を見つめる。
だけど章人は、目を合わせようとはしなかった。
電話?
一体、いつの間に実家に連絡をしていたんだろう。
「二人の気持ちを、私とお父さんだけ知っていても仕方ない。ずっと話せなくてごめんなさい。あなたたちに、言っていない話をするわね…」