俺様専務とあたしの関係


奥様は、社長にチラリと目を向ける。


それに応えるかの様に、社長は小さく頷いた。


そしてそれを確認すると、奥様はあたしに目を向けたのだった。


「章人から、美月さんの話は聞いています。だから、美月さんにも聞いて欲しいの」


目を細め、弱々しい笑顔を見せる奥様。


「はい…。お伺いしてもよろしいのでしたら…」


章人は、奥様たちにあたしとの事を話していたんだ。


それは嬉しくもあるけれど、軽い気持ちで側にいてはいけないんだと、改めて思わされた。


「実はね、章人の母親、亡くなった奈美子(なみこ)は、私の学生時代からの親友だったの」


親友!?


その事実に驚いて、あたしは思わず腰を浮かせそうになる。


だけど、それは章人と和久社長も同じらしく、二人ともア然としていた。


「私と奈美子は恋のライバルで、大学の交流会で出会った主人に、二人して一目惚れしたのよ」


懐かしそうにクスッと笑う奥様は、まるでその頃に戻ったかのように楽しそうに見える。


「だけど、主人が好きになったのは奈美子。私ではなかったわ」


「じゃあ、それでそのまま、社長と奈美子さんはご結婚されたって事ですか?」


思わず質問をしたあたしに、奥様はパッと顔を輝かせた。


それは、あたしが興味を持った事に、喜んでいる様に見える。


「ええ。そうよ。主人はその頃、未来の社長だったし、私は正直なところ奈美子に嫉妬をした」




< 134 / 194 >

この作品をシェア

pagetop