俺様専務とあたしの関係
奥様は、社長にチラリと目を向ける。
それに応えるかの様に、社長は小さく頷いた。
そしてそれを確認すると、奥様はあたしに目を向けたのだった。
「章人から、美月さんの話は聞いています。だから、美月さんにも聞いて欲しいの」
目を細め、弱々しい笑顔を見せる奥様。
「はい…。お伺いしてもよろしいのでしたら…」
章人は、奥様たちにあたしとの事を話していたんだ。
それは嬉しくもあるけれど、軽い気持ちで側にいてはいけないんだと、改めて思わされた。
「実はね、章人の母親、亡くなった奈美子(なみこ)は、私の学生時代からの親友だったの」
親友!?
その事実に驚いて、あたしは思わず腰を浮かせそうになる。
だけど、それは章人と和久社長も同じらしく、二人ともア然としていた。
「私と奈美子は恋のライバルで、大学の交流会で出会った主人に、二人して一目惚れしたのよ」
懐かしそうにクスッと笑う奥様は、まるでその頃に戻ったかのように楽しそうに見える。
「だけど、主人が好きになったのは奈美子。私ではなかったわ」
「じゃあ、それでそのまま、社長と奈美子さんはご結婚されたって事ですか?」
思わず質問をしたあたしに、奥様はパッと顔を輝かせた。
それは、あたしが興味を持った事に、喜んでいる様に見える。
「ええ。そうよ。主人はその頃、未来の社長だったし、私は正直なところ奈美子に嫉妬をした」