俺様専務とあたしの関係
嫉妬か…。
それは当たり前よね。
あたしが、奥様の立場ならやり切れない。
「奈美子は、キレイで頭も良くて優しくて、私には到底敵わない人だったのよ」
奥様も充分キレイな方だけど、章人を見れば奈美子さんの姿が想像できる。
「奈美子はね、私の気持ちを知っていたから、いつも申し訳なさそうにしていた。それがまた、神経を逆なでしてね」
罰悪そうに肩をすくめる奥様に、私は小さく笑顔を返す。
「同情をしないで欲しいと思ったわ。それから、二人が結婚してすぐに、奈美子の妊娠を知って、もう私は嫉妬で狂いそうになったの」
そりゃそうよ。
あたしでも、同じ気持ちになると思う。
「奈美子へ冷たく接した事もあったけど…」
そこまで言うと、奥様は言葉を詰まらせた。
「章人を産んですぐに亡くなったと聞いた時、私は心から泣いたのよ」
「奥様…」
「立ち直れないくらいに憔悴しきった和也さん…あ、主人の名前ね。彼を見た時、支えになりたいと思ったの」
そこまで言うと、奥様の目には涙が浮かび始めた。
「だけど、本当の理由は彼じゃない。生まれたばかりの天使の様な章人を見た時、私は奈美子の代わりになりたいと心底思ったのよ」
「母さん…」
初めて聞く“真実”に、章人も何かを堪えている様だった。
「奈美子が、どんなにこの子を抱きたかったか。どんなに顔を見たかったか。それ思うと、とても知らんぷりが出来なかったの…」
「ちょっと待てよ、母さん。オレを産んだ母親は、そんなにすぐに亡くなったのか?」
今、あたしも疑問に思った事だ。
てっきり、出産してしばらく後の出来事かと思っていたのに、今の話し方だとかなり直後の出来事みたい。