俺様専務とあたしの関係
「だけど、章人。ごめんなさいね。あなたに、ずっと疎外感を与えていたなんて…。本当に自分を情けなく思ったわ」
奥様の神妙な表情に、誰より一番章人に目を向けたのは和久社長だった。
きっと、章人の気持ちは知らなかっただろうから…。
「私ね、章人が成長をする度に、奈美子への後ろめたさが募っていったの」
「後ろめたさ…?」
章人の問いかけに頷くと、奥様は続ける。
「奈美子が見たかった章人を、私が見ている事。その気持ちが、いつの間にか、あなたに壁を感じさせていたのね…」
涙を浮かべて微笑む奥様は、それ以上何も言わない。
代わりに、社長が話し始めたのだった。
「和久に子会社の社長職をお願いしたのは、章人と助け合って会社を大きくして欲しかったからだ。出来るだけ、章人の“部下”でなく、対等の立場にさせてやりたかったんだよ」
ああ、そういう意味だったんだ。
和久社長は、章人に会社を譲りたいから、自分は子会社の社長にさせられたって言っていたものね。
それを聞いた和久社長は、口をギュッと閉じて、手には握り拳を作っている。
「和久、お前の名前に、私の名前を一文字入れているんだ。お前だって大事な息子なんだよ」
その言葉に、和久社長は静かに、一筋の涙を流したのだった。