俺様専務とあたしの関係


「あの言葉は感動したなぁ。あたし、ちょっと潤んじゃったもん」


「本当だな。やっと、本当の兄弟になれた気がするよ」


ハンドルを握り、真っすぐ前を見つめる顔には、笑みが浮かんでいる。


「家庭での疎外感が、全ての原因だったんだよな…」


「章人?何の話?」


独り言にも聞こえる言い方で、ポツリと呟く。


「いや、何でもないよ。今までずっとオレは、誰かに心底愛されたいって思ってたんだよな」


「うん…。でも、今日の話で、章人はたくさんの愛情に包まれてるって分かったじゃない?」


「そうだよな。長い間の心のつっかえが、取れた気がするよ」


そして、信号待ちで車は止まる。


その直後、章人はあたしにキスをしてきたのだった。


「ちょ、ちょっと。誰かに見られたら、どうするのよ?」


さすがに恥ずかしくて、あたしは顔が赤くなる。


「大丈夫だよ。誰もいないから」


「もう~」


「それより、ちゃんとケリをつけなきゃな」


ケリ?


「何の話?意味が分からないけど…」


「自分の気持ちにって事。なあ美月、蒼衣の結婚式に、お前も行ってくれないか?」


「えっ!?あたしも?」


ていうか、出席するつもりなんだ…。


「ああ。お前も。いいだろ?」


「う、うん…」


断ればまた角が立ちそうで、あたしは渋々、同意したのだった。




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