俺様専務とあたしの関係
「お、犯された!?」
思わず声を上げ、慌てて両手で口を抑える。
「その事を、章人に言わなかったんですか?」
すると、蒼衣さんはゆっくりと寂しそうな顔で首を横に振った。
「言えるわけないじゃない…。軽蔑されたくなかったから…」
「軽蔑って…。浮気したと思われたんじゃ同じじゃないですか!」
「ううん。自分の意思で、秀二と関係を持ったと思われる方がいいもの…」
「そんな…」
章人は、きっとその事実を知っていれば、蒼衣さんと別れる事はなかったと思う。
「蒼衣さん、章人はずっとあなたを忘れられなくて、泣いていたんですよ?あたし、男の人が泣く姿を初めて見ました」
あたしがそう言うと、蒼衣さんは目を潤ませた。
「今からでも遅くないんじゃないですか?章人にその時の事を話したら…?」
「それはダメ!今さら、どうすると言うの?秀二が私を好きだと知っていて、ノコノコ部屋へついて行ったのは私よ?自業自得だわ。それに…」
「それに?」
目から涙を溢れさせ、蒼衣さんは言った。
「章人に何て思われるか…。それが怖かったの」
「それなら、きっと大丈夫です。章人は言っていました。好きな女の人なら、例えどんな事があっても受け入れられるって、そう言ってました!」
章人が、和久社長に言っていた言葉こそ、今の蒼衣さんに伝えるべきよ。
すると、目を真っ赤にした蒼衣さんは、呆然としながら口を開いた。
「何で?美月さんは、何でそんな事を言うの?章人の恋人なのに…」