俺様専務とあたしの関係


吐き捨てる様にそう言うと、表情は硬いまま玄関へ向かう。


「待ってよ章人!追いかけなくていいの?今なら間に合うよ!」


ドアを開け、部屋へ入ろうとする章人の腕を思わず掴んだ。


「今さら、何をどうするんだよ?あいつは、結婚をするんだ」


「そんな…。好きでもない人と結婚をするの!?」


「好きなんじゃないか?じゃないと、いくら何でも結婚するわけないだろ?」


そう言って、面倒臭そうにあたしの手を払いのける。


「章人だって、まだ蒼衣さんを好きなくせに」


「は…?何を言ってるんだよ美月」


振り向いた章人の顔には、“分かった様な口を利くな”と書いてあるみたいだった。


「だって、あたしと一緒に住んでいる事も言ってなかったし、さっき蒼衣さんが来た事を話したら、動揺してたじゃない」


「話さなかったのは、タイミングを逃しただけだよ」


ため息まじりに言うと、章人はネクタイを緩めつつ再び部屋へ入ろうとする。


「ねえ!本当にいいの!?蒼衣さん、章人の事を今でも好きって泣いていたんだよ?」


二人とも同じ気持ちで、どうして知らんぷりをするのよ。


だけど、章人はあたしの言葉に無視をしたまま、背中を向けている。


「ちゃんと、お互いの気持ちを伝え合わなきゃダメだよ!あたし、そんな誤魔化したままで一緒にいられても嬉しくない!」


すると、章人はゆっくりと振り返った。


「いいのか…?本当に行っても」


「いいよ。今なら、まだ間に合うと思うから…。追いかけてあげて」




< 149 / 194 >

この作品をシェア

pagetop