俺様専務とあたしの関係
吐き捨てる様にそう言うと、表情は硬いまま玄関へ向かう。
「待ってよ章人!追いかけなくていいの?今なら間に合うよ!」
ドアを開け、部屋へ入ろうとする章人の腕を思わず掴んだ。
「今さら、何をどうするんだよ?あいつは、結婚をするんだ」
「そんな…。好きでもない人と結婚をするの!?」
「好きなんじゃないか?じゃないと、いくら何でも結婚するわけないだろ?」
そう言って、面倒臭そうにあたしの手を払いのける。
「章人だって、まだ蒼衣さんを好きなくせに」
「は…?何を言ってるんだよ美月」
振り向いた章人の顔には、“分かった様な口を利くな”と書いてあるみたいだった。
「だって、あたしと一緒に住んでいる事も言ってなかったし、さっき蒼衣さんが来た事を話したら、動揺してたじゃない」
「話さなかったのは、タイミングを逃しただけだよ」
ため息まじりに言うと、章人はネクタイを緩めつつ再び部屋へ入ろうとする。
「ねえ!本当にいいの!?蒼衣さん、章人の事を今でも好きって泣いていたんだよ?」
二人とも同じ気持ちで、どうして知らんぷりをするのよ。
だけど、章人はあたしの言葉に無視をしたまま、背中を向けている。
「ちゃんと、お互いの気持ちを伝え合わなきゃダメだよ!あたし、そんな誤魔化したままで一緒にいられても嬉しくない!」
すると、章人はゆっくりと振り返った。
「いいのか…?本当に行っても」
「いいよ。今なら、まだ間に合うと思うから…。追いかけてあげて」