俺様専務とあたしの関係
「おはようございます、専務」
とりあえず、ゆうべはビジネスホテルへ泊まった。
出て行ってから1時間半後、あたしの携帯には、何度も章人からの着信があったけれど、すべてを無視したのだった。
いくら家を出て行ったと言っても、さすがに仕事は放り出せない。
普段と変わらない雰囲気を意識して、会社へ着いた時には章人はすでに来ていたのだった。
「美月!お前、ゆうべはどこへ行ってたんだよ!」
あたしを見るなり、章人はデスクから立ち上がり駆け寄って来た。
「専務、今は業務中ですから」
淡々とした受け答えにカチンときたのか、章人の顔つきは険しくなる。
「荷物もないし、連絡も取れないし、どういう事なんだ?」
「そういう事です。専務、あたしたちは上司と部下ですから」
「違うだろ?恋人同士なはずだ」
その力強い言い方に、心が締め付けられる様に切なくなる。
だけど、あたしは敢えて冷たく言い放った。
「表面的な恋人同士だったんです。それに気付いたから、あたしは出て行きました」
「表面的…?」
絶句する章人に、あたしは頷いた。
「優しく甘い言葉をかけてくれる専務に、少しときめいたに過ぎないので」
そう言って会釈をすると、あたしは秘書室へと戻った。