俺様専務とあたしの関係
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日曜日の穏やかな午後、あたしと絢は、会社からほど近いアパートの一室へいた。
あたしの新しく住む家だ。
二階建て8室ある鉄筋のこの建物は、かなり年季が入っていて、1DKの部屋はどこかカビ臭い。
それでも、早く住む場所を見つけたかったあたしにとっては、不満にはならなかった。
「ありがとう~、絢。本当に助かったわ」
「別にいいわよ。これくらい。だけど、本当にいいの?章人専務の事…」
「うん。いいの…」
実はこのアパートは、絢の知り合いの人から紹介してもらったもの。
章人との事を絢に話すと、さっそくツテを回って探してくれたのだった。
「ねえ、やっぱり、話し合いくらいはするべきよ。何で、そんな事になっちゃってるのよ?」
簡単な引っ越し準備を手伝ってくれながら、絢は不満そうに聞いてきた。
「この間、話したでしょ?あたしの家庭の事…。それが全てなんだけど…」
「うん。それは覚えているけれど…」
今までなら、誰にも言わなかった事だけれど、これを話さなければ、章人との事も分かってもらえない。
そう思って話したのだった。
「ねえ、絢。泣くほど好きな相手を、そんな簡単に忘れられるものなの?」
「美月?」
片付ける手を止めたあたしに、絢は怪訝な顔を向けた。
「もし、そうなら、あたしを好きな気持ちなんて、さらに簡単に変わっちゃうんじゃないかって思ってしまうの」