俺様専務とあたしの関係
それぞれの道の真ん中で
「美月~。届いてるわよ」
「あ、は~い」
あたしは会社を辞めてから、実家へ戻った。
本当は戻りたくなかったけれど、あたしも自分の気持ちにケリをつけたい。
だから、また呆れられる覚悟で戻ったあたしを、両親は意外とすんなり受け入れてくれたのだった。
帰ってきた理由は聞かないで、ただ会社を辞めたと話した時、“お前がそれでいいのなら”と、言ってくれたのだった。
章人の家庭がそうだった様に、あたしも自分が考えている以上に、親から愛情は注がれていたのかもしれないな…。
2階の部屋から降りていくと、今届いたばかりの書籍の荷物を受け取る。
「はい、どうぞ。美月が、こういうのに興味があるなんて知らなかったわ」
お母さんは優しく笑いながら、部屋の奥へと戻って行った。
あたしは、少し恥ずかしくなりながらも、早々に袋から取り出す。
なぜなら、この本には章人が出ているから。
たまたま見つけた経済誌の宣伝で、次期経営者の一人として、章人がインタビューをされた見出しを見つけたのだった。
お母さんは感心していたけれど、経済誌に興味があるわけじゃなくて、章人が気になるだけ…。
あれから半年。
連絡先を変えたあたしは、絢ですら関係が途絶えている。
退職前に、散々助けてもらったお礼の手紙を送ったのが最後だ。
「ゆっくり見よ!」
築35年の木造和風の実家は、2階へ上がる階段が足を掛けるたびにきしむ。
章人と過ごしたあのマンションとはまるで違う、小さくて古い家だけれど、心の整理をするにはちょうどいい。
ベッドへ寝転がると、他のページを飛ばして、章人の記事から読み始めた。