俺様専務とあたしの関係
ページの四分の一ほどの大きさの写真に、章人の上半身までの姿が写っている。
濃紺のスーツに、落ち着いた深い赤色のネクタイを締め、口元は少し微笑んでいた。
「懐かしい…」
少し、髪型が変わったかな?
長くなっただけ?
色っぽい雰囲気はまるで変わっていない。
初めて、章人の秘書に異動になった時は、あんなに嫌で仕方がなかったのに…。
こんな風に愛おしく感じる様になるんだから、やっぱり恋愛って分からない。
2ページにわたるインタビュアーとのやり取りは、最初こそ堅苦しい経済の話や経営方針の説明が続いたけれど、後半はプライベートの話に変わっていた。
実は、この部分が一番興味津々だったりして。
“この若さで責任があるポジション、プレッシャーではないですか?”
インタビュアーのもっともらしい質問の後、章人はこう答えていた。
“もちろんあります。それでも、頑張れる要素はいくつもあるんです。”
「へぇ~。どんな要素よ?」
独り言を言いながら、目はゆっくりと文字を追う。
“それは、例えば恋人とか?”
このインタビュー、これが一番聞きたかったんじゃないかっていうくらい、この部分だけ直接的な質問をしている。
ドキドキと緊張しながら読み進めると、
“そうですね。やはり、大切な女性の存在は、とても大きいです。”
と書かれていた。
大切な女性か…。
それは、誰の事?
今さら、あたしが知る権利もないけれど、ここの記事だけ、何度も繰り返し読んでしまった。
章人と蒼衣さんは、ヨリを戻したのかな…。
そんな事を考えながら、あたしは小さなため息をつくと雑誌を閉じた。