俺様専務とあたしの関係


結婚式なんて、ハッキリ言って行きたくない。


だけど忘れるには、ちょうどいいタイミングなのかもしれないな。


傷つきたくなくて自分から手放した人を、想い続けるなんて無意味よ。


忘れきれなかった時間を、今度こそ思い出にして、あたしはまた一から出直す。


就職もして、実家で両親との時間も取り戻して、そしてまたいつか、心から好きになれる相手に出会ったら、本気で信じてみよう。


大丈夫。


もう誰も、あたしを本気で愛してくれないなんて、そう思う必要はないんだから。


そう決心してあたしは、新しい気持ちで自分を見つめた。


章人に出会ってから、華やかになった外見。


見た目だけじゃなくて、心もそうなりたいな…。


久しぶりに買ったヒールの高い靴を履いて、胸を張って音を鳴らしながら歩く。


大丈夫、大丈夫。


ほら、この音を聞けば、何でも出来そうな気がしてくるから。


そうして、本格的に仕事探しを始めたあたし。


心はすっかり本気モードになっていた。


そんな時、


和久社長との再会から10日後。


いつもの様に仕事探しを終え、夕方家へ戻ると、玄関の前に懐かしい高級車が停まっていた。


その車を見て、心臓が止まりそうになる。


これは…。


この車は、間違いないなく章人の車だ。


「な、何で…?」


呆然としていると、あたしをどこから見たのか、お母さんが玄関のドアを勢いよく開けて出てきたのだった。


「美月!待ってたのよ!」




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