俺様専務とあたしの関係
「うん。知ってたわよ」
そう答えると、お父さんと、その隣に座っているお母さんが怪訝な顔をした。
だけど、それを特に気にせず、あたしは章人に聞いたのだった。
「それで、いつなんですか?お式は?」
と、そこまで言った時だった。
またしても、お父さんが声を上げた。
それも、少し上擦った声で。
「美月、お前は何て色気のない言い方をするんだ!もう少し、可愛い言い方は出来ないのか?」
「そうよ美月。そんなストレートな聞き方がありますか?」
両親は、なぜだか呆れた様にあたしに言う。
「え?何よそれ。何で、そんな事を言うの?」
だいたい、可愛い言い方って何よ?
戸惑うあたしに、慌てる両親。
その中で一人、章人だけが笑いを堪えていた。
「専務?何がおかしいんですか?」
少しムッとすると、章人は“ごめん、ごめん”と言うと、あたしを笑顔で見た。
「美月、今日は君のご両親に、結婚のお許しを頂きに来たんだよ」
結婚のお許しって?
「誰との結婚の?」
何がなんだか分からないあたしに、お父さんが咳ばらいをして言ったのだった。
「お前との結婚に決まっているだろ美月。一体、誰の話だと思ってるんだ?」
「あたしとの…結婚?」
え?
「ええ~!?」
広くない部屋に、あたしの叫び声は響き渡り、またしてもお父さんから怒られてしまった。
「あ、あたしとの結婚…?」
完全にパニックなあたしに、章人はただ笑顔を向けるだけだった。