俺様専務とあたしの関係

一体、何が起きてるの？


あたしがただ呆然とする中で、章人と両親だけが会話を弾ませている。


どうやら、あたしが戻るまでの間、いろいろと話しをしていた様で、こうやって不意打ちで家へ来た事も、両親は理解しているみたいだった。


「美月には結婚の話しをしないで来られたと聞いたのに、知ってるって言われた時には驚いたわ」


お母さんは目を細め、笑顔でそう言った。


こんな風に笑うお母さんて、始めて見たかも…。

なにせ、仕事人間でギスギスしたオーラを放っていたからなぁ。


「そうだぞ美月。お前は一体、誰の話しだと思っていたんだ？」


「ちょっとね…」


お父さんの質問には、はぐらかした。


さすがに、蒼衣さんの話は出来ないわ。


「章人さん、私たちはこの子に厳し過ぎたところがあったと、今になって後悔しています」


ふいに、お母さんが章人に話しかけた。


それに応える様に、章人の顔も引き締まる。


「一人娘だからと、気合いが入っていた親心は空回りをしていて、結果として美月には寂しい思いをさせました」


伏し目がちのお母さんを見ながら、初めてその気持ちを聞き、あたしは言葉が出てこない。


そして、お母さんをフォローする様にお父さんが言ったのだった。


「美月には今さらに聞こえるかもしれないですが、私たちは娘の幸せだけが全てです。この子が望むのなら、あなたとの結婚には賛成をします」


それを聞いた章人は、座布団を降りると、頭を下げたのだった。


「ありがとうございます」


両手をつき、頭を下げたままの章人は、お父さんから促されるまで顔を上げなかった。