俺様専務とあたしの関係
「ったく、あいつは、からかいに来ただけかよ」
ため息をつきながら、章人はソファーに深く座り背もたれにもたれた。
「これ、蒼衣さんの招待状を持って来てくれたんでしょ?」
淡いクリーム色の落ち着いた四角い封筒を手に取ると、すかさず章人がそれを取り上げテーブルへ置いた。
「あ!見ようと思ったのに…」
膨れるあたしを、章人は優しく引き寄せるとキスをした。
「それより、半年ぶりに一日ずっと一緒なんだ。もっと、楽しい事をしよう」
「うん…」
そう。
ここへ戻ってきたのはいいけれど、章人は仕事が忙しく、日中は一人ぼっち。
夜も遅くて、ほとんど会話も出来ていなかったのだ。
だけど、あたしはその間、ブライダルの雑誌を読んだりと、結婚式に備えて情報収集をしている。
章人のお父さん、社長と奥様にも改めて挨拶を済ませ、あたしたちは一年後に結婚をする事になった。
入籍も来年する予定になっている。
章人が、“式はともかく、入籍は美月の誕生日にしよう”と言い、来年になったのだった。
新しい出発を、あたしの誕生日から始めたい。
その気持ちが嬉しくて、来年まで待つ事にした。
「それにしても、章人でも焦るんだね。なんだか、嬉しいな…」
キスを交わしながら、あたしは呟いた。
「さっきの和久の話か?ったく、余計な事なんだよな。そうだよ。焦った。かなり焦った」
半ばヤケ気味に言うと、章人はあたしをソファーへ押し倒す。
「美月を誰かに取られるなんて、想像もしたくない」