俺様専務とあたしの関係
包装紙を開けてすぐ、それが靴の箱だと分かった。
「靴だよ。お前、最初にプレゼントしたやつを捨てたろ?だから、新しいのをプレゼント」
箱をゆっくりと開けると、深紅のローヒールパンプスが出てきた。
「もう仕事で履くわけじゃないし、美月の服とコーディネートしやすいやつを選んだんだよ」
「本当に、ありがとう…」
ヤバイ、泣きそう。
なんて、センスがいいんだろう。
色や形は、あたしの足にピッタリだった。
「初めて会った日、お前廊下の床で、足を打ち付けてたじゃん。あれは、ちょっとウケたよ」
思い出し笑いをする章人に、あたしは問いかけた。
「覚えてたの…?」
「覚えてたよ。後から意味を知って、なるほどなぁと思ったけど…」
今思えば、章人との運命は、あそこから始まった気がする。
「もう、ヒールを鳴らす必要はないだろ?それに危ないから、こういう靴にしておけ」
「うん…」
あたしは靴を抱きしめながら、涙が溢れるのを止められなかった。
「ごめんなさい。最初にプレゼントしてもらった靴を、捨てちゃって…」
あの時は、章人と別れるつもりだったから、未練を残さない為に処分をしたのだった。
「いいよ。あれは仕方ない。それより、今日から美月は、正真正銘オレの奥さんだ。よろしくな?」
「章人…。こちらこそ、よろしくお願いします」
さらに涙を流すあたしから、章人は靴を取り上げると抱きしめてきた。