俺様専務とあたしの関係
社長室は、専務の部屋よりさらに三分の一ほど大きく、ノックをして出迎えた人は、懐かしいあたしの同期、一条絢だった。
絢は背が高く、サラサラで、黒のストレートロングヘアがよく似合う典型的な美人。
といっても西洋風なルックスではなく、どこかオリエンタルな感じで、涼しげな目元と薄い唇は知的な印象さえあった。
初めて絢を見た時、こんなキレイな人がいるんだって驚いたのよね。
緊張でいっぱいのあたしとは反対に、余裕の微笑みを浮かべた絢は、しっとりとした落ち着きある声で挨拶をした。
「お久しぶりです、章人専務。それに美月」
「久しぶり一条。といっても、一ヶ月ぶりだけどな」
専務は、笑顔を浮かべて絢を見る。
これはあくまで勘だけど、この二人はけっこう仲がいいんじゃないかな?
あたしには、どことなく壁を作っている感じがするのに、絢には心から笑顔を作っている感じがするもん…。
絢に促され、専務の後に続いて社長室に入る。
ドキドキするよぉ。
緊張も最高潮になった時、
「よお、オヤジ。今日から改めてよろしく」
思わず顔を見てしまったくらい、専務は軽いノリで社長に挨拶をしたのだった。