俺様専務とあたしの関係
専務の魔法
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信じられない!
専務の仕事が、こんなに肉体労働だったなんて…。
お昼から、スケジュール通りに仕事をこなしているけれど、とにかくハード。
ただのお偉いさんに会うだけかと思いきや、新しく建つ建物の見学があったりと、予想外の仕事が多い。
「はい、ヘルメット着用ね」
工事現場監督と言われる50代の小太りなオジサマから、愛想良く手渡された。
こう見ると、同じ50代の社長は、やっぱりカッコイイ部類に余裕で入る。
監督は、したたり落ちる汗を肩にかけたタオルで拭きながら、一生懸命何かを専務に話している。
天井を指差したり、それをまた専務も、真剣な表情で聞いていたのだった。
それにしても、ヘルメットってどうやってつけるのよ。
被ったはいいけど、ベルトの止め方が分からない。
モタモタしているあたしに気付いて、専務は呆れ顔をすると手を伸ばしてきた。
「ったく、世話が焼けるな」
顔は現場監督の方を向き、手だけベルトを掴んであっという間に止めてくれた。
“ありがとうございます”
を言いそびれるくらい、話に夢中の専務の背中を見ながら、あたしは少しドキドキした。
素っ気なくて冷たい人かと思ったら、優しい一面を見せてみたり…。
初めて会ってたった数時間で、こんな風に人の心に入ってくるんだもん。
少しだけ分かる気がする。
何で浮いた話が多いか…。