俺様専務とあたしの関係
その後も、春の陽射しが照り付ける中、専務は精力的に仕事をこなす。
移動は基本的に徒歩で、同行して気付いたけれど、歩いて移動出来る距離を考えてスケジュールは組み込まれていた。
「美月、大丈夫か?足痛いだろ?」
汗ばむ陽気の中、最後の現場へ向かう途中、専務はあたしに問いかけた。
「い、いいえ。余裕です」
なんて言ったけれど、実は足には激痛が走っている。
まさに棒の様で、今にも折れそうなくらい…。
だけど、“大丈夫!”と言い切った手前、今さら言えない。
“痛い”だなんて…。
なんとか気力で持ちこたえていたあたしに、次の現場で悲劇が起こってしまったのだ。
工事中の場所だけあり、足場が相当悪く、歩くのもやっと。
それでも専務の後について歩いていた時、あたしの足元から細くて高い音がした。
そしてその瞬間、思わずよろめいてしまったのだ。
「あ~!!」
見ると、右のヒールが折れているじゃない!
思わず叫び声をあげてしまい、専務と現場監督が怪訝な顔で振り向いた。
ウソ~!
靴、壊れちゃった…。