俺様専務とあたしの関係
すると、絢は少し困ったような笑顔を向けた。
「章人専務って、ああ見えていろいろ事情があるのよ」
「事情…?」
「そう。私から勝手には話せないけど、複雑な事がいっぱいあるの」
複雑な事って、どういう意味なんだろう。
あたしには、専務はただの軽い男の人にしか見えないのに。
「絢、専務の女癖の悪さとか、俺様な性格の噂は違うって事?」
「ううん。それは本当よ。でも、それには理由があるってわけ」
「理由…?」
「うん。いつか美月も専務と信頼関係が成り立てば、話してもらえるかもよ?」
「う、うん…」
別に話してもらう必要なんてないんだけど…。
「美月、秘書の仕事頑張ってね。社長が章人専務の秘書を探してるって聞いて、美月しかいないって思ったんだから」
「絢…。ありがとう…」
照れ臭くて、少し目線を下げる。
真面目に仕事をしていた自分が、少し報われた気分だ。
そんな話をしていた時、絢の内線が鳴り、会議が早く終わったと連絡があった。
「じゃあ絢、あたしは戻るね。いろいろありがとう」
笑顔で小さく手を振る絢を背に、専務室へと戻る。
「専務の事情か…。どうでもいいんだけど」
そんな事を知る必要なんてないもん…。