俺様専務とあたしの関係
数コール後、
「美月か?」
少し怪訝な声の専務が電話に出た。
「専務…、助けて…」
声を聞いた途端、張り詰めていた緊張が取れて涙が溢れる。
そんな涙声に異変を感じたのか、専務の声も緊張したのが分かった。
「どうした!?今、どこにいるんだ?」
「家です…。家に帰ったら泥棒が…」
「泥棒!?」
それ以上声にならず、あたしはただ泣いてしまっていた。
ついさっき、専務に生意気な事を言ったばかりなのに、こんな風に助けを求めるなんて虫がいい。
それは分かっているけれど、他に頼れる人がいなかった。
「怖い…」
「ちょっと待ってろ!すぐに行くから」
「えっ?」
来てくれるの…?
その力強い言葉に、少しホッとした時、
「章人~?何してるの~?」
女の人の甘ったるい声が聞こえて、我に返った。
「あっ、すいません…。お邪魔しちゃったみたいで。やっぱり、大丈夫です。変な電話しちゃって、すいませんでした」
あたしってば、何してるのよ。
慌てて電話を切ろうとすると、
「待てって!そっちに行くから待ってろ!」
少し怒った様な専務の声が聞こえて、電話はそのまま切れたのだった。