俺様専務とあたしの関係
逃げられない甘くて嘘の夜
頭がクラクラするわ…。
玄関ホールは、まるでホテルのフロント並に広く、端には焦げ茶色の皮張りソファーが二組と、その間にはテーブルが置かれている。
玄関でしょ!? ここは!?
「あの…、何であそこにソファーがあるんですか?」
専務は、何やら機械みたいな物に指をかざしていた。
「何してるんですか?」
「ああ、これ?ここは指紋認証なんだよ。セキュリティーには厳しい場所だから」
指紋!?
思わず後ずさりしたあたしの腕を、専務は引っ張る。
「おっと、逃げるなよ。荷物はオレが持ってるんだからな?」
逃げたい…!
指紋認証とか、本当にあるんだわ。
呆気に取られるあたしを強引に引っ張って、専務はエレベーターに乗り込む。
「ついでに言うなら、さっきのソファーは来客用。待ち時間に座るんだよ」
「は、はぁ…」
立って待ってればいいじゃん。
庶民のあたしには、理解不能過ぎる。
「このマンションって、20階まであるんですね?」
「ああ。ちなみに、オレは部屋は20階だから」
「そ、そうですか…」
へぇ。最上階ねぇ。
どこからどこまでも、VIPな感じがする。
そして、もはや言葉を失ったあたしは、専務の部屋へ着き、改めて絶句をするのだった。