俺様専務とあたしの関係
エレベーターを降りると、正面に見える一つの黒いモダンなドア。
どうやら、あそこが専務の部屋らしい。
オレンジ色の電球が廊下を照らしていて、充分な明かりはあった。
「さっきから思っていたんですが、まさか床は大理石とかじゃないですよね…?」
下を向くと、キレイに光っている床が目に止まる。
ヒールなら音がするだろうに、あいにく今のあたしの靴にヒールはない。
「よく分かったな。大理石だよこの床」
「ええ!?」
やっぱり!?
まさかとは思ったけれど、本当だったなんて…。
それに見渡す限り、他に部屋はない。
「ここって、専務だけの部屋しかないんですね…?」
「ああ。静かだしいいだろ?」
静かだからいいって問題じゃないけど…。
何もかもが違う世界で、あたしはキョロキョロと辺りを見回す。
その間にも専務はカードキーをかざすと、ドアを開けた。
ドアが開いた瞬間、真っ先に飛び込んできた光景は、リビングの窓から見えるキラキラと輝く夜景だった。
「す、すご~い!」
思わず靴を脱ぎ、部屋へ入ったあたしを見て専務は小さく笑った。
「このマンションの売り。夜景がよく見えるってのが」
「そうなんですね。すご~い!」
窓が大きいからか、余計に景色も大きく見える。
「ちょっと薄暗いけど、電気をつけていないとロマンチックだろ?」
「はい…」
ウットリと窓の側で夜景を見ているあたしの後ろから、専務が突然抱きしめてきた。
「美月…」