俺様専務とあたしの関係
すると、専務は優しく笑顔を浮かべて、もう一度強く抱きしめてきた。
「ありがとう」
“ありがとう”なんて言われるほどの事じゃないのに…。
でも、専務にとっては特別な事なのかもしれない。
そういえば、絢が言っていたよね。
専務にも事情があるって…。
あれって、一体どういう意味なんだろう。
「美月、何を考えてた?」
「えっ?いえ…。別に何も…」
知りたい…。
なぜだか分からないけれど、専務の事情ってやつを知りたい。
でも、今聞いたところで誤魔化されるだけだもんね。
気にはなるけれど、まだ聞かないでおこう。
そう思って、はぐらかしたあたしの唇に、専務はキスをした。
「美月…。美月…」
ほら、また名前を呼んでる。
ああ、分かった。
専務にとって、名前を呼ぶ事には特別な意味があるんだわ。
それが何かは今は分からない。
だけど、それはとても大切な何か…。
過去に何かあったの?
いつか、あたしにも話してもらえるのかな…。
絢が知っているみたいに。
そうだ…。絢も“章人専務”って、名前で呼んでたっけ。
やっぱり、何か意味があるのね。
専務と唇を重ね合いながら、あたしはそんな事を考えていた。
ただの俺様で軽い人だと思っていたのに…。
違うの…?
本当のあなたは、誰?