俺様専務とあたしの関係


元恋人…?


その言葉を聞いた瞬間、心に何か重たい物が落ちる様な感じを受けた。


「差出人にある早瀬蒼衣(はやせ あおい)さん。彼女が兄貴の元恋人なんだよ」


「早瀬蒼衣さん…。でも、何で昔の恋人から招待状が?」


思わず出た質問に、和久社長は困り顔で笑みを浮かべた。


「あまり詳しく話すと兄貴に叱られるから。ただ、出したのは新郎の方だと思うんだ」


「新郎が?」


「うん。実家に届いた時点で、兄貴と親しくないのは分かるし、新郎はねうちのライバル会社の御曹司なんだよ」


御曹司!?


「これ以上は何も言えないけど、兄貴と蒼衣さんの事はオヤジも絢さんも知っているから…」


「絢もですか!?」


「うん。だから、なかなか渡し辛くてさ。美月さん、兄貴と同じマンションに帰るんだろ?二人きりになった時に渡して」


「は、はい…」


絢まで知っているなんて…。


これで、以前から聞いていた専務の“事情”ってヤツが、見えてきた気がする。


複雑な気持ちで、あたしはその招待状を、手に持っていたハンドバッグにしまった。


「兄貴ね、今でも蒼衣さんを忘れられないんじゃないかな?そんな気がするよ」


「そう…ですか」


和久社長の言い方から、きっとフラれたのは専務の方だと分かる。


「だけど意外でした。専務に本命の方がいたなんて…」


行き着けのブランドの店員さんも、知らない口ぶりだったのに。


「それだけ、蒼衣さんには本気だったって事。誰にもかれにも、話してないんだよ」




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