俺様専務とあたしの関係
「だれにもかれにも?」
普通、本命の人こそ周りに話しそうなものなのに…。
「うん。オレたちの世界は汚い部分も多いし、蒼衣さんの性格からも、あまり周りにはお披露目をしていなかったな…」
「じゃあ、ごく親しい人にしか、言っていなかったってことですか?」
「その通り。兄貴モテるから。やっかみからも、彼女を守りたかったんだと思うよ」
そこまで大事にしていた恋人の話を、社長はともかく絢が知っているのが複雑だった。
どうして絢が知っているの?
まさか、絢も専務と何か関係があるの…?
と、一人で考え込んでいた時、
「あ、兄貴だ」
和久社長の言葉に、あたしは思い切り振り向いた。
少し遠くから、こちらに歩いて来る専務が見える。
「心配かけたかな?じゃあ、オレは先に戻るよ。招待状の件、よろしく」
和久社長は軽く手を上げると、部屋へ戻って行った。
途中、すれ違う専務と一言二言、会話をしたみたいだったけれど、内容までは聞き取れない。
そしてあたしはというと、その場を動けず、専務が近付いてくるのをじっと見つめているだけだった。