俺様専務とあたしの関係
そう思っても、あたしに専務を責める権利はない。
あたしは、恋人でも何でもないんだから。
最初から、おかしいと思っていたのよね。
どうして好きでもない女を、こんなに優しく抱けるのだろうって不思議だったけれど…。
好きな人を抱いていたんだ。
あたしを通して、昔の恋人を…。
それを考えると、自然に流れる一筋の涙。
どうして、傷ついてるのよ…。
「美月?」
名残惜しそうに、あたしを汗ばむ体で抱きしめていた専務が、声をかけてきた。
「何でもないです。すいません…」
専務の胸に顔を埋めて、あたしは目を閉じた。
そんなあたしを、何も言わずに抱きしめる専務。
勘違いしちゃいけない。
お互い、恋愛感情なんてないんだから。
あたしは、ただ見せかけの愛情に惑わされているだけ。
専務を好きなわけじゃない。
ただ、寂しさを…。
心の寂しさを一瞬でも埋めてくれる人だから、だからあたしはこんな夜を過ごしているのよ。
ただ、それだけ…。