俺様専務とあたしの関係
「章人専務…」
「ん?どうした?」
すっかり、いつもの出勤時刻に近付き、専務は鏡越しにネクタイを結んでいる。
ゆうべ、和久社長から預かった結婚式の招待状を、あたしは思い切って差し出したのだった。
「これ、ゆうべ和久社長から預かったんです。ご実家に届いたらしくて…」
どんな反応をする?
緊張しながら様子を伺っていると、
「ありがとう…」
明らかに戸惑う様子を見せて、専務は招待状を受け取った。
そして、差出人の名前を、食い入る様に見ている。
「あの…、お友達の方なんですか?」
「いや…、会社関係だ」
無理矢理、笑顔を浮かべているけれど、引き攣ってますって…。
「会社関係ですか…」
やっぱり、あたしには話してくれないんだ。
本当の事を…。
「それより美月、業務外で“専務”はナシって言ったろ?」
招待状をテーブルに置き、いつもの軽い調子に戻った専務は、あたしにそんな事を言ってきた。
「あ…、そうでしたよね。だけど、さすがに呼び捨ては抵抗がありますし…」
名前を呼ぶだけでも、進歩したと思うんだけどな。
「前にも言っただろ?名前で呼んでれば、距離も縮まるって。あと、タメ口で話せよ」
「え~?」
不満げな声を出すと、専務は両手であたしの頬を包み込んだ。
「なあ美月。オレたち、もう少しお互いを知る様にしないか?」