俺様専務とあたしの関係
しばらく抱きしめ合っていると、迎えの車が到着した様でチャイムが鳴った。
「あ、来たな…。残念だけど、もう行こう」
ゆっくり離した章人は、あたしのおでこにキスをする。
「章人…」
あたしは確かめる様に、その名をもう一度口にした。
すると、章人は満面の笑みを浮かべたのだった。
「ほら、名前で呼び合うと、もっと近くなった気がするだろ?」
「うん…」
小さく頷いたあたしに、手を差し出す。
「玄関ホールまで、手を繋ごう」
大きくて、あたしの手なんて簡単に包み込みそう。
その手にゆっくりと、自分の手の平を重ねる。
まるでオママゴトみたいだけど、それを居心地良く感じていた。
少し不安はあるけれど、拒むだけの勇気もない。
握られた手に温もりを感じながらエレベーターに乗り込むと、ここでも章人はあたしにキスをした。
「もっともっと、美月とキスをしたいのにな…」
「うん…。あたしも…」
好きになる事が怖い。
深く深く、ハマっていく事が怖い。
だけど、章人のキスだけは止めて欲しくない。
このキスは、心の奥底まで、固まった気持ちを溶かしていくから…。
素直になったあたしを、章人は今までにないくらい優しい笑顔で見つめると、息も止まるくらいの激しいキスを続けた。
エレベーターの扉が開くその瞬間まで…。