俺様専務とあたしの関係
スーツを着こなして、凜として立つ姿は章人によく似ている。
和久社長は、愛想のいい笑顔を浮かべて、あたしたちに近付いてきた。
「オヤジに用があってね。せっかくだから、兄貴に挨拶と…」
そこまで言うと、あたしに視線を向けた。
「美月さんとも、少し話をしたくて」
「あたし!?」
思わず、すっとんきょうな声を上げ、慌てて口を手で覆った。
「美月と…?」
一瞬にして章人の顔が険しくなる。
「あ、もちろん時間が開いた時でいいよ。絢さんみたいに、美月さんとも仲良くなりたいだけだから」
その言葉に軽さはなく、あたしには純粋にそう思っている様に映った。
だけど、章人はあたしの隣で、眉間にシワを寄せたままジッと和久社長を見ている。
「専務…?」
ただならぬ雰囲気を察して声をかけてみると、やっと口を開いたのだった。
「今日は、午前中が会議だ。その間なら、美月も手が空く時間があるかもしれない」
「本当に?ありがとう兄貴。美月さん、時間は取らせないから大丈夫かな?」
「はい。専務が会議に入られたら、お声を掛けますので」
そう言うと和久社長は笑顔で頷き、社長に会ってからまた来ると言い残して、社長室へ向かったのだった。