俺様専務とあたしの関係
「章人専務、何か気にかかる事でもあるんですか?」
専務室に入りデスクへ着くと、さっそく会議資料に目を通している。
「いや…別に」
「別にって。そんな雰囲気じゃなかったですけど…」
「気のせいだよ」
まるで、あたしには目もくれないで、ただ資料を読んでいるだけ。
話してくれないなら、普段通りにしてくれてたらいいのに…。
まあ、いいか。
これ以上問い詰めたところで、何も話してはくれないだろうし。
ため息を飲み込んで、秘書室に戻ろうと背を向けた時、
「美月、和久と会うのに社外には出るなよ?」
と、声をかけられたのだった。
思わず振り向いたけれど、章人は資料から目を離していない。
「分かりました…」
最初からそのつもりだったけど、何でそんな事を言うのだろう…。
腑に落ちないまま、章人の会議が始まり、それと同時にタイミング良く、和久社長が秘書室へやって来たのだった。
「忙しいのにごめんね、美月さん。招待状を渡してくれたかな?」
「はい。渡しました」
なんだ。
それが聞きたかったんだわ。
章人が意味深な反応をするから、ちょっと警戒しちゃったじゃない。
すっかり気を抜いた時、和久社長があたしに言ったのだった。
「兄貴、結婚式に行くのかな?ねえ、美月さん。何か聞いてる?」