俺様専務とあたしの関係
寝取られた…!?
少なくとも、自分が今まで生きてきた中で、寝取られるとかそんな話は聞いた事がない。
まるで、別世界の様な話に、あたしはしばらく呆然とした。
「だから、兄貴にとっては割り切れない別れだし、それに…」
「それに?」
「女遊びをする様になったのは、そもそもは、蒼衣さんとギクシャクするようになってからだから」
その気持ちは、なんとなく理解出来る…。
一生を過ごしたいと思った人に裏切られて、その時の章人の気持ちを考えれば、ヤケになる行動は理解出来た。
だけど、それと同時に、やっぱりあたしに対する言動は、本気じゃないんだって思い知らされた気がする。
「美月さんは兄貴と仲がいいみたいだけど、まさか変な関係だったりしないよね?」
「えっ!?あたしがですか!?」
鋭い突っ込みに、思い切り動揺する。
さすがに和久社長に知られちゃマズイでしょ?
あたしは気を取り直すと、平然とした顔を向けた。
「そんなんじゃないです。間借りしているお部屋も、近々出て行こうと思っているので」
とっさに出たデタラメだったけれど、不審に思われない為には仕方ない。
すると、和久社長はホッとした様な笑顔を浮かべた。
「良かった。安心したよ。兄貴の慰めに、美月さんが使われるのは不本意だから」