俺様専務とあたしの関係
微妙に気まずい雰囲気で部屋へ入ると、章人は乱暴にカバンを投げた。
それが、かなり大きい音を立てたものだから、思わずビクッとしてしまう。
怒ってる…。
キスを拒んだだけで、こんなに怒るなんて…。
あたしたち、恋人同士でも好き合っている者同士でもないのに、なんで章人はここまで擬似恋愛が出来るのだろう…。
ピリピリオーラを出す章人を避ける様に、あたしは寝室の隅で着替えをする。
これで、家を出て行きたいなんて言ったら、どんな反応をするんだろう。
それを考えていたせいで、あたしは全く気付かなかった。
章人が後ろに来ていた事を…。
「美月…」
下着姿のあたしを、章人は突然後ろから抱きしめた。
「イヤッ!」
驚いたあたしは、なんとかその腕から逃れようと必死にもがいたけれど、ますます腕に力が入ってくる。
「どうしたんだよ?朝とは、ずいぶん様子が違うじゃないか」
耳元で、わざと息がかかる様に囁く章人に、あたしはゾクッと感じてしまう。
「もう嫌なんです…。あたし、やっぱりこんな関係は変だって気付きました」
すると、章人は強引にあたしを振り向かせると、明らかに険しい表情で睨んだ。
「敬語を使うなって言ったろ?オレに壁を作るなよ」
「章人専務は、あたしに踏み込み過ぎです」
わざと“専務”という言葉を使った事で、さらに表情は硬くなる。
「美月…、ふざけるなよ」
そう言うと、あたしの唇に強引にキスをすると、乱暴にベッドへ押し倒したのだった。